Archive for 4月, 2013

新しい挑戦3【結婚相談所の扉を開くのは】   no comments

Posted at 1:45 pm in 日々の事

何人にも、相談所からの紹介で逢ったのだそうです。
それぞれ結婚に対して真剣ですから全てを正直に話してくれるその中で、次また会いたい人か否かをお互いが決めていく。

「オレが結婚相談所に登録してよかったと思ったのは、了見ってのかな、これが広がったってことたい。」と彼は言いました。
「こういう狭い村での生活をしとると、どんどん了見も狭くなる。
それが一度外の世間に眼を向けるとグッと運が開けるというか、いろんな可能性が広がってくるとたい。」

彼の幸せそうな顔を見て本当によかったなと感じると同時に「このオレは。。」と寂しくもなりました。
それからはなんということもない話をし帰るといった彼を見送りに出た玄関先で「今度、婚約者に会ってくれ。」そう彼が言いました。
「結婚式の案内も届くとは思うが、その前にな、3人で飲もうや。そげん期待すんな。美人じゃなかぞ。(そんなに期待するな、美人じゃないぞ)」
そう朗らかに笑いながら「これね、オマエも見てみらんや?(見てみないか?)」と言って、大きめの封筒を私に渡しました。
それを受け取り彼が帰った後に中を覗くと、彼が登録したという結婚相談所なのでしょう、パンフレットが入っていました。

玄関に飾っている両親の結婚式の写真を見上げました。
白黒の写真の中で、若い両親は笑っています。
親父の顔に自分の顔をすり替えて想像してみました。
おふくろの顔には誰も乗せ換えることが出来ず、ぼんやりとしたままの想像です。

「オレも登録してみようか。」
そうつぶやいていました。
不安もあります。
しかし膨らんでいく希望を、心が確認しています。
こんなオレでも、誰かが出会いを待っていてくれているのだろうか。
パンフレットに真剣に目を通そう、そう思い封筒になおしました。

襖が開いて、廊下に母が出てきました。
「ショウちゃんは帰ったとね?何しに来たとや?(ショウちゃんは帰ったのか?何しに来たのか?)」
母はすっかり折れ曲がった腰を少し伸ばすような仕草をして、トイレの方へ歩いて行きました。
その背中が随分と小さくなったことに愕然とし「早く安心させてあげよう」そう心に決めました。

次の日、私は結婚相談所に電話をかけました。
こんな思い切ったことをするのはもう随分無いことだったなと、ちょっと笑えてしまいました。
自分にとっては「大いなる挑戦!」
でもこの決断が「新しい扉を開くこと」のような気がしています。

Written by admin on 4月 19th, 2013

新しい挑戦2【認めたくない想い】   no comments

Posted at 1:44 pm in 日々の事

なにか事情があったのだ。
騙すつもりはなかったのだろう。
そう思うことで自分を慰めもしますが、この年になってのこのようなショックは中々立ち直ることが難しいものです。
私が騙されたという噂は村中に広まり、いたたまれない気分の私は村を出ることも考えましたが、年老いた両親を残すことも出来ずに淡々と毎日を過ごすことになりました。

「おれ、結婚するばい」
私と同じような境遇の幼なじみが、ウチに来てそう私に言いました。
「いつの間にオマエ、そんなことになっとたとや?婚活しとったんかいや?全然知らんだったぞ。(いつの間にそんなことになっていたのか?婚活していたのか?全然知らなかった。)」
驚いて矢継ぎ早に訊く私に幼なじみは「結婚相談所に登録してたんよ。」と言いました。
「オマエに話そうと思いよったけど、結婚相談所がイイもんか悪いもんかもわからんうちに教えて勧めたりでもしてさ、そこでまたオマエが傷ついたりでもしたら、オレはどう謝っていいかわからん。」
気の優しい男ですから、そう考えるだろうとは思います。
顔もそこそこ、性格も申し分ない、なにが悪くて結婚出来ないのか全く合点がいかない男ではありました。
言えるとすれば、積極的ではなかったろうとは思います。
それは私も同じですが。。。

「んで、どげんな人や?(それでどんな人?)」と訊くと彼は嬉しそうに、「歳はオレより3つ下ばってん、2人の子どもが居るとたい。(歳はオレより3つ下だが、2人子どもがいる)」と答えました。
「子持ち?死に別れや?それとも離婚や?」
彼は初婚ですから、なんで子持ち選ぶのだと思ってしまいました。
相手さんに対して失礼なことを言っていると解ってはいるのですが、納得はいきません。
適齢期を逃した男などは贅沢を言えないということなのでしょうか。

「離婚だと聞いとるばい。うん、初めはオレもそう思ってた。なんでバツが付いてる人とってな。」
ただな。。。と、彼は続けます。
「オレもう40半ばやろ?今から子供産むとすると、子供の成人式には66才ばい。
何があるかわからんしな。
それを子どもがいる女の人に対して『そこまでよく育てたな、頑張ったな、ありがとう。これからはオレと一緒に育てような』そう思ってみたらどうだろうって考えたんだ。」
彼がいうのはこういうことです。
相手に子供がいるということは、そこまで育てる苦労を飛び抜かしてオレに家族ができるということだと。
それに対して自分も感謝し相手も感謝してくれて。。というお互いを思い遣れる結婚ができるんじゃないかと考えたということです。
事実彼が結婚する相手は彼に接するとき万事控えめでありながら、自分を選んで結婚を決めた彼への感謝を常に態度で現してくれる気立ての良い人のようです。
その姿を見て、最初難色を顕わにしていた両親も彼女に好意を抱くようになり、二人の子供達にもさりげなく文房具などを買っていたりするようになっていったと。

Written by admin on 4月 19th, 2013

新しい挑戦1【婚期を逃していた】   no comments

Posted at 1:43 pm in 日々の事

田舎のことですから、一度結婚の時期を逸するとなかなか出会いが巡ってこないものです。
私自身に結婚の希望が無いだとか諦めたとか、そんなのではないのです。
40半ばを過ぎてしまっただけの、ごく普通の男性です。
容姿が良いとは決して言えませんが、不快感を与えるものでもないと思っています。
一端の恋愛だってありました。
その相手との結婚を、考えなかったわけでもありません。
ただ両親が相手の職業を強く嫌がった、それが別れを決定的にしました。
私が悪かったのです。
もっと相手を庇ってあげればよかったものを、つい両親の反対に押され相手に悲しい想いをさせました。
私を本心から好いてくれた彼女に、深い心の傷を負わせたことは男として最低です。
今頃になって「あの時の人で良かとに(よかったのに)」などと言い出す両親に不愉快さを感じますが、それも私の責任。
彼女はその後出会った男性と結婚をし、幸せになっています。

父が脳梗塞で倒れ家業である農業を継ぐことになってから、出会いはますます減りました。
農家は1日の流れを見れば自由な時間も多いのですが、反対に365日休みがない仕事とも言えます。
20代30代であればそれでも遊びにいく体力気力が溢れていますが、40代ともなれば明日の朝の早さを考え「寝ようか」となってしまいます。
近所の仲間と飲みに行くこともありますが、村の中にある居酒屋は一件だけ。
飲むのもいつものメンバーならば店の中のお客さんすら顔見知り、出会いなどどこにもありません。
農閑期とて冬ですので、23時を過ぎれば道は毎日凍結です。
街に降りて飲みに行った帰りは代行運転を頼むことになりますが、どこそこまでと相手に告げると断られてしまいます。
凍った道はよっぽど慣れたものでないと、四駆だとしても怖いものです。

そんなある日、村の居酒屋に一人の女性が従業員として働くことになりました。
見掛けが華やかな彼女に、私は夢中になりました。
彼女も私を好ましく思ってくれているようで、彼女の休みの日にはドライブをしたり買い物をしたり映画を見たりと、私にもやっと出会いが訪れたと心踊るような毎日を過ごしました。
二人で家庭観なども話すようになり、プロポーズの時期をどうしようかと私が密かに考える、そんな関係になりました。
よい日取りを選び予め用意していた指輪を持って、彼女との待ち合わせに向かいました。

指輪を見た彼女は浮かぬ顔を見せます。
「オイのことが好きやなかとか?(オレが好きじゃないのか)」と訊くと「そんなことはない」と答えます。
「じゃなんでそげな顔をするとか?(どうしてそんな顔をするの)」の問いかけに、彼女はようよう家の事情というものを話し始めました。
察しの良い方はここでお分かりでしょう。
私は彼女を信用していましたから、100万ほどと指輪を渡しました。
そのあと彼女は村から消えました。

Written by admin on 4月 19th, 2013